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ガソリンから電気へ:新時代に突入したアメリカンブランドを解説します

テスラ ロボタクシー

アメリカの自動車産業は、ヘンリー・フォードがライン生産式でT型フォードを大量生産することで自動車産業の発展におおきく貢献しました。

1950年代になると、アメ車は同国の豊かさを象徴する存在でした。その後、日米貿易摩擦にまで発展した日本メーカーの流入、ビッグ3(GM、フォード、クライスラー)の凋落などを経て、現在ではテスラがEVシェアの約半数を握るなど、新しい動きも出ています。

Chapter
テスラをはじめ新興EVメーカーも加わったアメリカ自動車事情
カマロ、コルベットを擁する『シボレー』
ビッグ3としての栄光、そして経営破綻も経験した『クライスラー』
絶頂期にはマツダなど多くのブランドを傘下に収めた『フォード』
アメリカの豊かさを象徴する存在だった『キャデラック』
日本でもクロカン/SUVの代名詞として 絶大な知名度を誇る『ジープ』
日本では短命に終わった『ダッジ』
世界のEVをリードする新興自動車メーカー『テスラ』
アメリカの懐の深さが生んだテスラを筆頭に電動化でしのぎをけずる

テスラをはじめ新興EVメーカーも加わったアメリカ自動車事情

ヘンリー フォード T型

アメリカの自動車産業の歴史は1980年代までさかのぼることができます。当時は、スチュードベイカー、パッカード、オールズモビルといった高級車メーカーが幅を効かせていました。

その勢力図を塗り替えたのが、1908年にデビューしたフォード・モーター社のT型フォードです。

大量生産方式で作られたT型フォードは、比較的安価で販売されたこともあり、それまで富裕層の乗り物だった自動車をおおきく普及させました。

その後、1920年代になると、いわゆるビッグ3が出揃い自動車産業はさらなる発展を遂げます。

第二次世界大戦後は、自動車がアメリカの文化やライフスタイルの象徴となり、大型車やカラフルなデザインが流行します。

ところが1970年代のオイルショックと、その後のグローバル競争もあり、アメリカの自動車メーカーは方向転換を強いられることになりました。

現在は、テスラや新興EVメーカー、中国メーカーなどの台頭により、ビッグ3も厳しい競争環境に置かれています。

そのため各メーカーとも新たな技術に積極的に投資しつつ、伝統的なブランド価値を活かしながら、次世代の自動車産業に対応しようとしています。

カマロ、コルベットを擁する『シボレー』

シボレー ベルエア インパラ 1958

現在、GM(ゼネラルモーターズ)のいちブランドであるシボレーは、創業者であるスイス生まれのレーサー兼エンジニアであるルイ・シボレーから命名されました。

日本ではカマロ、コルベットというアメリカンマッスルスポーツで有名ですが、セダンをはじめ、SUVやピックアップトラックなど幅広いラインナップを誇ってきました。

1996年に発売されたトヨタ キャバリエは、貿易摩擦の緩和策としてシボレーからOEM供給されました。

シボレー コルベット ZR1 2024

近年では、ボルトEVなど電気自動車にもいち早く参入。日本における代表的モデルは、現在の販売車種であるカマロ、コルベットです。

前者は映画『トランスフォーマー』により若い層からも支持があり、後者は現行型の8代目でスーパースポーツカーの多くが採用するミッドシップ化をはたしています。

ビッグ3としての栄光、そして経営破綻も経験した『クライスラー』

クライスラー ダート コンセプト

長らくビッグ3の一角を占めてきたクライスラーは、鉄道技師であったウォルター・クライスラーが1925年に創業しました。

6気筒エンジンや4輪油圧ブレーキ、エアロダイナミクス(空力力学)などの先進技術の導入にも意欲的でした。

アメリカの古き佳き時代を謳歌しながらも1970年代後半には生産拡大路線やオイルショック、日本やドイツ車などに押されて経営危機に陥ります。

カリスマ経営者で自伝でも知られるリー・アイアコッカにより経営を立ち直すもダイムラーとの世紀の大合併後は、2009年についに経営破綻にいたります。

その後2014年にフィアット傘下入りし、FCA、グループPSAを経て、現在はステランティスN.V.傘下となっています。

クライスラー パシフィカ pacifica 2024

日本では、戦前から輸入されてきたクライスラーは、クライスラージャパンセールスが1995年に設立されると、ダッジブランドも日本に上陸させるなど、一時ブームも巻き起こします。

PTクルーザーなどのヒットモデルも生まれましたが、2017年末には日本市場から撤退。

本国でも代表的セダンの300Cも生産を終え、現在のラインナップはミニバンのパシフィカのみとなっています。

絶頂期にはマツダなど多くのブランドを傘下に収めた『フォード』

フォード 100周年

GM、クライスラーとともにビッグ3の一角を占めてきたフォードは、T型フォードに始まり、本国米国での栄枯盛衰、欧州フォードによる小型車の生産、販売。

日本を含めた多くの市場で一時期、一定のシェアを握るなどGMとともにアメリカを代表するメーカーとして隆盛を極めました。

1996年に入るとマツダを傘下に収め、ランドローバー、ボルボなどもフォード・グループの一員になりました。

フォード フォーカス、マツダ アクセラ、ボルボ S40/V50とプラットフォームを共有化し、日本にも導入されるなど、お馴染みの存在でした。

また、フォードといえば、アメリカ生まれの大型サルーンやSUV、ピックアップ、ミニバンなどのほか、欧州フォードからのコンパクトモデルやSUVなども日本に上陸するなど、大人気を誇りました。

しかし、2016年に日本市場から撤退し、現在はアフターサービスなどが行われています。

フォード マスタング マッハE

代表的モデル(日本にも導入されたことのある車種)は、エクスプローラー、エスケープ、クーガ、フォーカス、マスタング、モンデオなどがあります。

アメリカの豊かさを象徴する存在だった『キャデラック』

キャデラック フェートン V16

2022年に創業120年を迎えたキャデラックは、1911年にセルフスターターを開発し、V8やV16エンジンの量産化、パワーステアリングの搭載など、技術面での優位性を発揮してきました。

創業間もない1909年にGM傘下に入り、アメリカ大統領の専用車として長年の間、使われるなど、同国を代表する高級ブランドとしてもよく知られています。

巨大なテールフィンやロングノーズなどアメリカ車らしいフォルムを擁し、1950年代、60年代の古き佳き時代に栄華を極め、数々の映画にも登場し、アメリカの豊かさを象徴する存在でもありました。

キャデラック エスカレード 2024

1980年代に入ると、日本車の高級車と競合するようになり、小型車や一気に最新の内外装を備えたCTSやSTSなどを投入し、スポーティ路線も強化します。日本ではエスカレードをはじめとしたSUVが人気を集めてきました。

現在、日本で新車販売されるのは、セダンのCT5と、SUVはエスカレードを筆頭に、XT4、XT5、XT6があります。

日本でもクロカン/SUVの代名詞として 絶大な知名度を誇る『ジープ』

ジープ 

ジープは、日本でお馴染みのブランドです。その昔は、クルマに詳しくない人が最低地上高の高い4輪駆動車を「ジープ」と呼ぶなど、文字通りクロカンモデルやSUVの代名詞的存在でした。

第二次世界大戦中に米軍の要請により、アメリカン・バンタム社で開発されたのを契機に、生産台数を拡大。同国の戦線拡大に欠かせない存在でした。

戦時下ではトヨタもジープを参考にしたことはよく知られています。

戦後の日本でも三菱自動車の前身によりライセンス生産されたほか、スズキ  ジムニーも含めてジープを参考にしたメーカーは数多く、現在のクロカンモデルに大きな影響を与えました。

近年は、アメリカンモーターズ、クライスラー、ダイムラー・クライスラー、フィアット、FCA傘下を経て、現在はステランティスN.V.の一員となってPHEVやEVなど電動化が進められています。

ジープ ラングラー 4xe

日本で現在新車販売されているのは、人気のラングラー/ラングラー・アンリミテッド、グランドチェロキー、チェロキー、コンパス、レネゲードのほか、EVのアベンジャーが導入されたばかり。

そのほか、本国ではグランドワゴニア、ワゴニア、グラディエーターなどがあります。

日本では短命に終わった『ダッジ』

ダッジ チャージャー デイトナ

クライスラーの紹介で触れたように、ダッジは1914年の創業後、1928年からはクライスラーの傘下に入り、日本では1997年のダッジ バイパーを皮切りに、ネオン、マグナムがクライスラーブランドから発売されました。

2007年からはダッジブランドの名で展開され、豊洲でプレス向け発表会が大々的に行われました。

それ以降も、ナイトロやチャージャーなどが発売されるもクライスラーの破綻により日本市場からは約6年で姿を消しました。

ダッジ チャレンジャー & チャージャー 2022

日本でも発売されたモデルも含めて代表的車種は、SUVのナイトロ、マッスルカーのチャージャーやバイパー、チャレンジャー、セダンのチャージャー、マグナムなどがあります。

世界のEVをリードする新興自動車メーカー『テスラ』

テスラ

テスラは、2003年に創業され、2008年からはイーロン・マスクがCEOを務めています。

同氏は、創業時に資金を投入し、EVや太陽光発電、人類の火星への移住という自身が追求する理想に向かって邁進しています。

テスラの第1弾はロータスをベースとしたロードスターで、日本にも12台が導入されました。

日本との関わりといえば、トヨタが出資していたほか、現在もパナソニックが駆動用バッテリーを供給していることでも知られています。

その後、モデルS、SUVのモデルX、コンパクトセダンのモデル3、コンパクトSUVのモデルYを発売しています。

大型EVトラックのSemi(セミ)、日本でも期間限定で披露したサイバートラックなど斬新なモデルも発表し、世界のEVシェアは20%に迫るトップランナーとなっています。

アメリカの懐の深さが生んだテスラを筆頭に電動化でしのぎをけずる

テスラ ロボタクシー

現在、日本から撤退したブランドも多いアメリカ車。グローバル化の流れにより個性が薄まりつつあるものの、テスラという新たな選択肢も出るなど、自動車産業の懐の深さも感じさせます。

輸入車のなかでもドイツやフランス、イタリア以外の選択肢として存在感を放っています。

塚田 勝弘|つかだ かつひろ

自動車雑誌、モノ系雑誌の新車担当編集者を約10年務めた後に独立し、フリーランスライターとしても10年が経過。
自動車雑誌、ライフスタイル雑誌、Web媒体などで新車試乗記事やカーナビ、カーエレクトロニクスなどの展開している。

塚田 勝弘|つかだ かつひろ

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