【プロ解説】各部にアップデートを受けた新しいランクル”70”は2014年の復刻版より上!?
トヨタ ランドクルーザーは、1951年の初登場から2023年6月までに累計1,130万台を売り上げた、トヨタを代表するSUVです。
なかでも“70(ナナマル)”シリーズは、1984年の発売以来、マイナーチェンジを重ねながら販売が続いているロングセラーモデルです。
そんなランクル”70”シリーズが2023年にアップデート。同時に復活したランクル”70”の解説と試乗インプレッションをお届けします。
- Chapter
- 約10年ぶりに再々販売となったランクル”70”
- 細部のパーツにくわえボディデザインも新しくなった2023年版”70”
- セッティングの見直しと電子制御技術の搭載で進化した足まわり
- 高い耐久性と過酷な状況でも安定した性能を発揮するグローバルエンジンを搭載
- 安全装備はToyota Safety Senseを搭載
- パワフルな走りと低燃費を両立
約10年ぶりに再々販売となったランクル”70”
2023年11月に販売を開始したトヨタ ランドクルーザー"70"は、1984年にデビューしたランクル”70”がベースです。この最初の”70”は、2004年まで販売され、カタログから姿を消しました。
ところが2014年に「ナナマル誕生30周年」に合わせ、ファンの要望に応えるカタチで海外で販売されていたランクル“70”が、1年間だけの期間限定で復活。この中古車はプレミアが付くほど現在でも人気です。
その後も、海外市場では途切れずに販売されてきたランクル”70”ですが、2023年に大幅にアップデートを受けて、3度目の国内投入となりました。
海外市場ではヘビーデューティ系のSUVモデルらしく、ピックアップやバンといったボディタイプ、4.5L V8ディーゼルターボ+5速MT仕様など、それぞれの地域にマッチしたパッケージがラインナップされています。
細部のパーツにくわえボディデザインも新しくなった2023年版”70”
2023年版のランクル”70”は、タフさを誇る伝統のラダーフレームに、“70”らしいシルエットを残しながらアップデートがなされた水平・垂直基調のボディと、LEDのランプ類がポイントです。
ボディサイズは、全長4,890mm×全幅1,870mm×全高1,920mm。ホイールベースは2,730mmで、最低地上高は200mmを確保。
セッティングの見直しと電子制御技術の搭載で進化した足まわり
前後リジッドアクスルにフロントがコイルスプリング、リアはリーフスプリングというサスペンション形式は、1999年のマイナーチェンジモデルから継承されたものですが、日本の道路事情に合わせるためスプリングレートが見直されています。
くわえて、電動デフロック、ビークルスタビリティコントロール(VSC)、アクティブトラクションコントロール(A-TRC)、ダウンヒルアシストコントロール(DAC)、ヒルスタートコントロール(HAC)といった駆動力、制動力を制御する機構を搭載することで、高い悪路走破性と操縦安定性を実現しました。
高い耐久性と過酷な状況でも安定した性能を発揮するグローバルエンジンを搭載
2023年まで販売されたランドクルーザープラド(150系)と同じ2.8L 直列4気筒ディーゼルエンジン(1GD−FTV型)は、水冷式インタークーラー、ターボチャージャー、燃焼室などの最適化により、最高出力150kW(204SP)と最大トルク500Nmをそれぞれ発生。
コモンレール式燃料噴射システム、DPR(排気ガス浄化装置)、尿素SCRシステムなどにより高い環境性能を両立しています。
トランスミッションの6 Super ECT(6速AT)は、シーケンシャルシフトマチック機能付きで、マニュアル感覚での操作が可能です。
駆動方式はパートタイム式4WDで、通常の使用環境に適した「H2」に、滑りやすい路面で4WDならではの安定感を発揮する「H4」、ローギアードで強力な駆動力を発揮する「L4」を用意し、路面状況に応じて切り替えることが可能です。
燃費性能は、WLTCモードで10.1km/Lとなっています。
安全装備はToyota Safety Senseを搭載
新しいランクル”70”は安全性も進化しており、Toyota Safety Sense(トヨタセーフティセンス)を標準装備します。
プリクラッシュセーフティをはじめ、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビーム、ロードサインアシスト、発進遅れ告知などがおもな機能で、その他にクルーズコントロール(定速制御のみ)、コンライト、ドライブスタートコントロールなども搭載されて、オフロード走行はもちろん、駐車時、シフト操作時の安全・安心を提供しています。
今回試乗したのは、ランドクルーザー”70”のAXというグレード。車両本体価格480万円にベーシックナビ(12万3420円)、前後2カメラドライブレコーダー(4万4200円)、フロアマット(3万8500円)を追加した合計500万6140円という仕様です。
サイドステップを使って運転席に乗り込むと、ボンネットの四隅が見渡せる高いシートポジションとなっていて、SUVではなくトラックに乗っているような感覚となります。
インテリアは、水平基調の力強いデザインに、オフロード走行に適した機能的レイアウトを採用しています。センターのディスプレイは7インチサイズで、このあたりに基本設計の古さが感じられます。
パワフルな走りと低燃費を両立
エンジンを始動してアクセルを踏み込むと、わずか1,600rpmで最大トルク500Nmを発生する2.8L直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、車両重量2,300kgというヘビー級のランクル“70”を簡単に加速させます。高速道路の合流などでもストレスを感じることはありません。
加速性能はスムーズですが、ノイズや振動はそれなりにあります。乗り心地は、オールラウンドタイヤを装着していることもありやや硬めですが、段差を乗り越えた際の衝撃などはしっかりと吸収してくれている印象です。
街乗りで約8.0km/L、高速道路では10.1km/Lを上回る実燃費は、ほぼカタログ通りです。
今回は、大雨のなか、さらに舗装路だけという試乗となったため、ランドクルーザー“70”の性能の半分も引き出すことは出来ませんでしたが、ヘビーウェット路面での安定感は抜群。
1984年の初登場のモデルとは思えないほど、高い走行性能を感じられました。
ほかに代わるモデルがない唯我独尊系のランクル”70”は、指名買いユーザーが多いことは想像に難くありません。