誰もが知ってる!? 英国生まれの自動車メーカー(ブランド)と代表的モデルを解説
英国生まれの自動車ブランドは数多く、独自のブランド力を備えているメーカー(ブランド)が大半となっています。
いっぽうで、現在は多くが他国のメーカーやファンドの傘下に入っているか、あるいはMINIのように名前(商標)だけ残っているケースなど、紆余曲折ありながら生き残ってきたのも英国自動車ブランドの特徴です。
そんな英国発祥の自動車ブランドと、現在の代表的モデルについて解説します。
- Chapter
- 自動車大国だった英国。そのブランド力は現在も健在
- タタ傘下のジャガー、ランドローバー
- 高級車の代表格ロールス・ロイス
- モータースポーツから高級車まで、英国を代表するベントレー
- 日本でも人気の高級スポーツカー、アストン・マーティンの現在
- 8年連続輸入車ナンバー1のMINIは多彩なラインナップ
- スポーツカーから電動化が進むロータスの現在地
- 元はF1から進出したマクラーレンも現在は市販車ブランドに
自動車大国だった英国。そのブランド力は現在も健在
英国の自動車メーカーがクルマの発展に貢献してきた役割は大きく、戦前はアメリカに次ぐ自動車大国でした。
戦後は、多くのブランドを抱えたブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)という大メーカーが生まれ、その後BMCはレイランドモーターと合併してブリティッシュ・レイランド・モーター・カンパー二―(BLMC)に発展。
この時期には、ロールス・ロイス、アストン・マーティン、ロータス、英国フォード、ヴォグゾール、ルーツ・モーターズなどが存在しました。
しかし英国経済の低迷により、BLMCは1975年の国有化を経て分割民営化。いわゆる英国病からEU離脱など、自動車産業を取り巻く状況は年々厳しくなり、多くのメーカーがドイツや中国、インドなど他国企業の傘下に入ることになりました。
とはいえ、他国企業の傘下に入ってもそのブランド力に陰りはない例も数多くあります。
タタ傘下のジャガー、ランドローバー
ジャガーランドローバー(Jaguar Land Rover Automotive PLC)は、現在、インドのタタ・モーターズ傘下にあり、ジャガー、ランドローバーともに世界中に多くのファンを抱えています。
1922年に設立(スワローサイドカーカンパニー)され、モータースポーツでも数々の栄冠を手にしてきたジャガーと、1948年にローバーモーターから発売された四輪駆動の多用途車(ランドローバー シリーズ1)に端を発するランドローバーは、それぞれ別のメーカーでしたが、フォード傘下となっていた2002年に統合されました。
フォード時代は、ボルボ、アストンマーティン、ジャガー、リンカーン、マーキュリーとプレミア・オートモーティブ・グループとして高級ブランドを統括する事業部に入っていました。
その後、ジャガーとランドローバーは、2008年にインドのタタ・モーターズに売却されることになります。
100年を超える歴史を持つジャガーは、スポーツカーやサルーンを主戦場としていて、スポーツクーペのFタイプをはじめ、XJ(生産終了)、XF、XEというセダンをメインに展開。
さらに、同ブランド初となるSUVのF-PACEをはじめ、コンパクト(全幅は1.9mとワイド)SUVのE-PACE、バッテリーEV(ピュアEV)のI-PACEというSUVも揃えています。
かつての名車では、日本のスポーツカー作りに影響を与えたジャガーEタイプなどを送り出してきました。
いっぽうのランドローバーは、SUVに注力するブランドで、戦後にローバーモーターがランドローバー シリーズ1を発表してから歩みを始めます。
1994年にBMWの傘下に入り、2000年にフォードに売却されました。
ランドローバーには、多人数乗車やタフな悪路走破性を備えるディフェンダー、ファミリーユースにも使えるディスカバリー、コンパクトなディスカバリースポーツ。
ランドローバー内の高級ブランドのレンジローバーは、最上級SUVのレンジローバー、上質かつスポーティなレンジローバー スポーツ、プレミアムコンパクトSUVのイヴォークなどでラインナップが構成されます。
高級車の代表格ロールス・ロイス
120年を超える歴史と伝統を誇るロールス・ロイスは、航空機エンジンとともに自動車を製造するロールス・ロイス リミテッドとしてスタートしました。
1970年代には英国政府により国有化されますが、数年と経たないうちに自動車部門は戦前に統合されていたベントレーも含めて重工業メーカーのヴィッカースに売却。
1998年には、フォルクスワーゲンによって買収された後、2003年1月にロールス・ロイスはBMWグループ、ベントレーはフォルクスワーゲングループの傘下となり現在にいたります。
ロールス・ロイスの現在の代表的な車種は、ファントムやゴースト、同ブランド初SUVであるカリナン、EVのスペクターがあります。
中古車では、クーペのレイスなどが流通しています。
モータースポーツから高級車まで、英国を代表するベントレー
ル・マン24時間レースなどモータースポーツでの輝かしい歴史を持ち、ロールス・ロイスとともに、英国を代表する高級車ブランドのベントレー。
2003年からはフォルクスワーゲン傘下に入り、現在にいたっています。
ウォルター・オーウェン・ベントレーが1919年に設立したベントレーモーターズは、1931年にロールス・ロイスにより買収されます。その後は、先述したように、紆余曲折もありながらもフォルクスワーゲン傘下に収まっています。
なお、日本人では、実業家の白洲次郎が英国留学中にベントレーを所有していたことが知られています。
現在のラインナップは、フルモデルチェンジを受けたばかりのコンチネンタルGT、コンチネンタルGTC(コンバーチブル)、同ブランド初のSUVベンティガ、大型サルーンのフライングスパーのほか、特別な仕様である各モデルのパーソナライゼーションを手がけるマリナーの日本での人気も絶大となっています。
中古車市場では、すでに生産を終えたスポーツサルーンのミュルザンヌなどが流通しています。
日本でも人気の高級スポーツカー、アストン・マーティンの現在
高級スポーツカーブランドとして知られるアストン・マーティンは、1991年にフォード傘下に入るまで、ほかの英国(民族系)メーカーと同様に紆余曲折があり、経営状態も安定していたとは言えませんでした。
フォード傘下時代には、ボルボやジャガーなどとともにプレミア・オートモーティブ・グループの一員でしたが、フォードの経営が傾くと投資グループに売却され、現在はローレンス・ストロールを筆頭に、投資ファンドやボルボの親会社である中国のジーリー(浙江吉利)、メルセデス・ベンツグループなどもアストン・マーティンの株式を所有しています。
現在は、同ブランド初のSUVであるDBX、リアルスポーツのヴァンテージ、スーパーツアラーのDB12、グランドツアラーのDBSなどをラインナップしています。
中古車市場には、DB11、DB11ヴォランテ、DBSスーパーレッジューラ、ラピードなどが流通しています。
8年連続輸入車ナンバー1のMINIは多彩なラインナップ
ミニは、英国由来のブランドとして、日本でもっともポピュラーな存在といっていいでしょう。
ブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)のエンジニアであったアレック・イシゴニスは、ミニベロ(小径自転車)のアレックス・モールトンの開発でも知られています。
アレック・イシゴニスによるオリジナルのミニは、エンジンとギヤボックスを2階建てにした世界初の横置きエンジン・フロントドライブ(FF)を採用し、自動車の発展に大きな貢献をしています。
約40年ものあいだ生産され、現在も多くのファンを抱えているのは周知のとおりです。
1994年にBMWがランドローバーとMINIを含むローバー・グループを傘下に収めましたが、その経営は振るわず2000年にはMINI以外のブランドを売却。
BMW製のMINIが2001年に登場し、大ヒットを飛ばします。初代(R50)MINIは、3ドアとコンバーチブルを設定していました。
2006年登場の2代目は、3ドアとコンバーチブルにくわえて、クラブマン、カントリーマン(日本名はクロスオーバー)、クーペ、ロードスター、ペースマンと次々に派生モデルを追加し、「MINI=スモールカー」という図式を超えて、いち大ブランドとして成長を遂げます。
3代目は、2013年にリリースされ、5ドアモデルが登場。コンバーチブルやカブリオレ、クラブマンなどの多彩なボディバリエーションも継続し、BセグメントからCセグメントを広くカバーするラインナップとなっています。
4代目は2024年3月に日本で発表され、車名が一般的に知られているMINIクーパー(MINI=ミニ・クーパーと誤解されてきた)に統一。3ドアモデルにはバッテリーEVも設定されました。
またクロスオーバーは世界共通のカントリーマンに統一され、内燃機関のほかに、バッテリーEVも設定。2024年6月にはバッテリーEV専用モデルのエースマンも追加されました。
現在のラインナップは、MINI3ドア(EV、ガソリンエンジン車)、MINI5ドア、MINIエースマン、MINIカントリーマン、そしてスポーツ仕様のジョン・クーパー・ワークスが設定されています。最新世代もBセグメント、Cセグメントをカバーしています。
中古車では、BMW以前のオリジナル(クラシック)MINIも含めて多彩な選択肢があります。
MTの設定もあり、クーパーSやジョン・クーパー・ワークスを選択すればアグレッシブな走りも楽しめます。
BMW世代では、先述したように、初代から3代目(4代目はまだほとんど出回っていないようです)まで多彩なボディバリエーション、パワートレーンや2WDだけでなく4WDも選択できます。
内燃機関もガソリンエンジン車だけでなく、経済的なディーゼルエンジン車もあり、輸入車ブランドとして8年連続で1位を獲得しているのも頷けます。
スポーツカーから電動化が進むロータスの現在地
英国のみならず、世界のスポーツカーの歴史に欠かせない存在であるロータスは、天才エンジニアだったコーリン・チャップマンが生み出したブランドです。
ヨーロッパ、エスプリなど、1970年代のスーパーカーブームを語るうえで欠かせない花形モデルのほか、セブン、エラン、2021年まで生産されていたエリーゼやエキシージなど、数多くのライトウェイトスポーツカーを世に送り出してきました。
また、黎明期からモータースポーツにも注力し、1960年にはスターリング・モスの手によりF1優勝を成し遂げます。なお、中嶋 悟がF1デビューを飾ったのもロータス(ホンダ)でした。
ロータス・カーズは、一時期マレーシアのプロトン傘下でしたが、現在はボルボを傘下に持つ中国のジーリー(吉利汽車)傘下になっています。
現在、日本の正規代理店はLCI(エルシーアイ)が務めていて、エリーゼ、エキシージ、エヴォーラの後継であるエミーラ、電動SUVのエレトレを導入しています。
さらに、EVのエメヤ(4ドア)も2023年にアメリカで発表済みです。
中古車市場で流通しているのは、エキシージ、エリーゼが中心となっています。両モデルともにパワステは付いていません。
元はF1から進出したマクラーレンも現在は市販車ブランドに
前身のマクラーレン・カーズから現在のマクラーレン・オートモーティブに移行したマクラーレンの市販車部門は、マクラーレン・グループの子会社です。
2024年3月にバーレーンの政府系投資ファンドであるムムタラカットがマクラーレン・グループの全株式を取得したと発表しています。
現在、市販車部門とF1などのレース部門は切り離されているようですが、マクラーレンの市販車といえば、1989年にマクラーレン・カーズから発売されたマクラーレン F1がよく知られています。
中央に運転席を、左右に助手席を配置するというフロント3座の2ドアクーペ(ミッドシップレイアウト)で、マクラーレンのF1ドライバーであったミカ・ハッキネンがTVCMに出ていました。
その後、2011年にはマクラーレン・オートモーティブからMP4-12C、675LT、650S、720Sなどが登場します。
現在は、アルトゥーラ、アルトゥーラ/スパイダー、750S/750Sスパイダー、GTS、765LT/765LTスパイダーなどがラインナップされています。
中古車では、570Sクーペ、650Sスパイダー、720Sなどが出回っています。
英国発祥のブランドは、英国皇室御用達をはじめ、映画の「ボンドカー」としても有名なモデルやブランドが揃っています。
ライトウェイトスポーツやスーパースポーツなどの歴史にも名を刻んできました。
今回、取り上げたブランドのほかにクラシックスポーツのモーガンやスポーツカーのケータハムという英国スポーツカーブランドも正規導入されています。
いずれも電動化という時代の流れに対応しつつ、栄えある歴史を受け継いでいます。